購入特典としてのブックカバー
ブックカバーというものの特性などを考えれば、人に見せられるものであれば大々的に披露することも出来るが、それ以外のどう考えても公共の場では精神的な害悪をもたらす書籍ともあれば、良識あるない以前の問題で、恥ずかしさにかられて見ようという気も起きない。中には変なタフさを兼ね備えている人がいれば、例えば電車内で成人本を臆面もなく読んでいる人もいないとは言い切れないのが残念なところ。さすがに躊躇や気まずさが立ち込めてしまうため、周囲の人がしまえと圧力をかけそうなのものだ。日本人はとにかく人の目に付く中で自分の醜態となる部分を曝したくない、特に年齢にそぐわない趣味であればまずそれらを隠そうと必死になってしまう。ブックカバーはそうした心理を的確に見抜いた日本文化の賜物だ。
そんなブックカバーだが、とらのあなのような企業などによっては書籍の購入特典として配布されていることがある。それもおおよそ人に見せられるものではないものもあれば、別バージョンのかなりきわどいものだったりとするものの、購入特典としてのブックカバーの本質については従来のものとは相違なのは確かだ。
お手製ブックカバーレシピ
コレクター商品としての価値
そもそも一定の書籍を購入した場合で配布されるブックカバーの特徴というのは、そのまま通常の書籍に巻かれているカバーを取り外して付け替える、というのが本来の用途といえる。別バージョンのカバーにして見た目から書籍を更に楽しむためのものともいえるが、そんな使い方をしている人はごく少数だろう。このブックカバーの特典の本懐とは、『集める』ことにある。収集目的として人からは扱われ、更に人によっては配布されているかどうかで購入するか否かの線引きにするといったこともある。中にはいわゆる『観賞用・保存用・布教用』といった目的で複数冊購入して特典を手に入れる、なんて人もいるくらいだ。ただ最近ではこうしたやり方で手に入れた特典をオークションなどで取引するといった、商用目的の転売が横行しているため問題となっている。
ブックカバーの購入特典を多く配布しているのは、筆者の経験上やはりとらのあなが一番多いといえる。この扱いが特に難しそうだというのを何となく顧客視点からだが理解できる。こういったものの場合、大半が描き下ろし、つまりは初公開となるイラストを使用しての特典となっているため人によっては絵師、つまりイラストが貴重だと考えている人にとって十分価値があるものだ。だからこそ前述の転売もあるのだが、それ以上に欲しがっている人にしてみれば、それはブックカバーというよりも『コレクター商品』といったものとして大事に保管する選択を取る人が多い。
傷が付いていれば苦情もの
コレクター商品といわれると想像もつくが、細かい点を気にしない人はともかくある人によってはそんな特典をなるべく良品として手に入れたいと考えている。そのため店舗スタッフも気をつけて保管しなければならないのだが、必ずしも状態が完全に保全されているという保障もないため、時には苦情も頻繁に出るという。
ただこの時交換という手続を取れれば問題ないかもしれないが、特典は基本数に限りがあるためすべての人に配布できるわけではない。配布上限数に達した時点で交換は出来なくなってしまい、こうなると交換が不可能になってしまうこともある。ブックカバーは本来隠す・保護するといったものだが、購入特典の描き下ろしイラストがプリントされているといった条件が付随すると本質は少し別の方向で変化するようだ。
読みたい100冊
使用している人は早々いない
コレクター商品という価値に変貌したブックカバーだが、実際に書籍の表紙として使用されないとするならどんな道筋を築くことになるかだが、それは『保存』という手立てだ。中にはそんなブックカバーを丁寧に丸めて状態維持を目的とし、丁重に保管している人もいるという。収集癖がない人からすればあまり想像のつかない世界だろう、つかないのであればそれに越したことはない。そういう世界に片足でも突っ込んでしまうと、何かと物を扱うことに慎重になってしまうからだ。
それはそれで結構大変なので、保管するための場所やスペースといったものがない人はそこまで大きくこだわる必要もないが、これについては一定の需要が見込めるためおそらく止むことはない。隠す手段ではなく、集める喜びとしてのブックカバーも意味は少し異なっているが、根本的には人に見られたくないものなのは変わらないところだ。保管されれば人目につかない、すなわち隠されるという意味では。